DJAIKO62のアート噺

東京都内&京都の美術館で開催中の特別展・アート展について、インスタ記事としてあげたものをまとめています。

【展】上村松園-美人画の精華-@山種美術館

学芸員DJのDJAIKO62です。東京&関西を中心に開催中の特別展・アート展・美術展のレビューを書かせていただいています。

   

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都内の美術館でも特に好きでプライベートでもよく通っています、山種美術館へ。

2017年8月29日から開催中の特別展「上村松園 美人画の精華」の内覧会でした。

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2015年にもこちらで上村松園展がありました。

◆その時のレビューはこちらから→【【展】特別展 上村松園 生誕140年記念 松園と華麗なる女性画家たち@山種美術館

 

山種美術館所蔵の上村松園18点、一挙公開の機会。

山種美術館創立者・山﨑種二さんは上村松園さんと親交が深くありました。松園が息子の松篁と東京に来れば、宿・車・食事など丁寧におもてなし。山﨑種二さんの奥さまふうさんが特に松園の絵が好きだったことが蒐集のきっかけとなったそうです。

そんなコレクションはなんと18点!今回もそのすべてが見られます。

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4章88点で構成されている今展、最初の部屋第一章が全て松園です。(「砧」だけ第2章に展示)

前回はブログで「牡丹雪」と「新蛍」について感想を少し書かせてもらいましたが、

今回印象に残ったのは「庭の雪」です。

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上の写真よりも、作品を前にするともっと鮮やかです。透明感のある雰囲気、寒さにのぼせたような赤い頬に手元も着物の袖の中、ちらちらと舞う雪に白い息すら見えてきそうな気がしませんか?

松園の言葉に「女性は美しければよい、という気持ちで描いたことは一度もない。一点の卑俗なところもなく、清澄なかんじのする香高い珠玉のような絵こそ私の念願とするところのものである。」とあります。

松園さんの絵には”なまめかしさ”が一切感じられません。これにはいつも驚かされます。「こうあるべき」と思ってもそれを描く技量が無いとかないませんが、松園さんは男社会の画壇で苦労して成功、世に認められた女性の日本画家です。「異性からの目線、異性にこびるような点」には嫌悪感があったのではないか、と思うほど隙が無い美しさが際立ちます。言うなれば同じ女性でも圧倒されるような存在感を持つ人っていますよね。決して見た目だけではない、「あ、この人の魅力にはどう頑張ってもかなわないな。素敵だな。」と思う人は年齢問わずいます。そういう人だったり、本来その人の持つ純粋な魅力だけを丁寧に描いているように思えるんです。ぜひ他の作家さんとの視点の違いも意識して楽しんでください。

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着物や髪飾り、髪型にもぜひ注目を。

松園さんは戦時中をのぞき、生涯着物を着て過ごしました。私も着つけは勉強しましたが、洋服と比べるとやはり着心地が楽なものではありません(^-^;。最初は着物に着られているような感じで、1年くらいしてやっと着物を着て鏡に映った自分が「それらしく」みえるようになったものです。所作も随分と違いますが、指先にまで気を配るって実は大事だなぁと普段とはまた違った点に気付いてハッとすることもあります。

私は現在週2でラジオの生放送のために京都に帰るんですが、土地柄もあり、観光客の方がレンタルの着物をきてみえる様子を以前より頻繁に見かけるようになりました。そこでちょっと気になるのが着こなしです。胸元を必要以上にあけたり裾を短くし過ぎたり、年齢にちょっとあわない素材や柄の着物、小物類や履物が洋装のまま…など、余計なことなんですが「おしいなぁ。」と思うこともあります。あまり和装を知らない人でも「これは美しいな。」という着こなし、上質な着物、また帯や小物の合わせ方、髪型や髪飾りといったおしゃれ、流行り廃りはあっても、日本の文化として大事に残っていくといいなという気持ちが松園さんの美人画には込められているんじゃないかなとも思います。(川端康成から「京都が京都らしさを失ってしまう前に描いてほしい」と懇願されて東山魁夷が「年暮る」を描いた…というのをちょっと思い出しました。「年暮る」も好きな作品で、山種美術館所蔵ですよ。)

 

撮影OKな作品も。

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第2章で見られる、上村松園「砧」(山種美術館)です。京に上った夫の帰りを待ちわびる妻の姿。「肖像のような又仏像のような気持ちで描いた」とあります。

※撮影の際は絵のそばにあるルールを確認の上お願いします。 

 

Cafe椿でお決まりのおやつタイムも。

私が山種美術館で楽しみにしているのはアート鑑賞後のお茶。毎回開催中の特別展にちなんだオリジナルの和菓子が登場します。青山の「菊家」さんの本格的な和菓子で、今回は上村松園小林古径、そして橋本明治の作品にちなんだ5つの和菓子が楽しめます。

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いつもとっても迷いますが、ここの黒糖風味のあんこはコクがあって甘くて大好きなのでいつもあんの種類も気にして選びます。今回は「よみびと」というお菓子がそうでした(↑写真上段左の緑色のもの)。こちらは上村松園の「詠哥」にインスパイアされているそう。和菓子はテイクアウトもできますよ。作品のそばに「こちらがお菓子になりました」的な印もあります。絵から選ぶのも面白いですね!私はお抹茶もセットで頼みます。購入したお土産を見せ合ったり、図録をめくりながら作品の話に花を咲かせたり…、また松園さんの生き様や言葉を振り返ってみるのもいいですね。充実した時間になると思います。

 

山種美術館
上村松園美人画の精華-
2017年8月29日-10月22日
休館日や開館時間、またイベントの開催などは公式サイトでご確認ください。→【http://www.yamatane-museum.jp/

 

※ 展示室内の写真はすべて内覧会時に特別に許可をいただいて撮影したものです。今展では「砧」のみ撮影が可能です。

  

DJAIKO62(学芸員DJ)

2016年4月よりαステーションFM京都にて生放送担当中!月&火曜の16時~18時、Kyoto Air Loungeです。radikoプレミアムで全国からお聴きいただけます♪

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