DJAIKO62のアート噺

東京都内&京都の美術館で開催中の特別展・アート展について、インスタ記事としてあげたものをまとめています。

【展】歌麿大作「深川の雪」と「吉原の花」-138年ぶりの夢の再会-@岡田美術館

学芸員DJのDJAIKO62です。東京&関西を中心に開催中の特別展・アート展・美術展のレビューを書かせていただいています。

 

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歌麿大作「深川の雪」

プライベートでももう何度も通っているのが箱根・小涌園にある岡田美術館です。

2014年に約60年ぶりに公開された歌麿作の「深川の雪」。

1952年、銀座の松坂屋さんで展示されたのを最後にその所在が長年行方不明だったものが2012年に奇跡的に発見され、岡田美術館の収蔵となりました。ニュースにも大きく取り上げられ、Google検索でも「岡田美術館 深川の雪」と入力すると「混雑」というワードが出てくるほど全国から人が集まりました。その後2015年にも公開され、高精細の複製画が展示されることもありましたが、今展はまた特別な意味を持ちます。というのも、138年ぶりに「吉原の花」のお里帰りがかなったからです。

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↑入り口には一緒に記念撮影できるスポットも。岡田美術館は携帯やカメラ、スマホの持ち込みが禁止されているので(100円が戻るコインロッカーがたくさんあります。)外の足湯やこちらの入り口、庭園でいっぱい思い出写真を撮りましょう!

 

 

138年ぶりの再会

京都の話ですか?というくらいの時の流れです。人はそんなに長生きしませんから、美術品や骨とう品くらいしかそんな時を超えて再会なんかしません。不思議とロマンを感じますよね。

そもそもですが「深川の雪」は喜多川歌麿による3部作の1つです。他に現在ワズワース・アセーニアム美術館(アメリカ・コネチカット州)所蔵の「吉原の花」、そしてフリーア美術館(アメリカ・ワシントンD.C.)所蔵の「品川の月」があります。

3部作が揃ったのは1879年(明治12年)、栃木県の定願寺の展観に出品されたのが最後。栃木の町の財産として、ハレの儀式の時にお寺などにかけ並べたものだろうと館長の小林さんは推定していらっしゃるそうです。そのためこれだけの大作なのに署名はありません。その後明治期にパリに渡り、「深川の雪」は1939年(昭和14年)に日本に帰国しました。

実は今回来日している「品川の月」は高精細の複製画です。フリーア美術館の所蔵品はシカゴの鉄道王チャールズ・ラング・フリーアの個人コレクションがもとになっています。国に寄贈したものを個人の名前を冠して美術館の一部として○○ギャラリーとなるケースは他にもあります。ところが、フリーアのコレクションは遺言により門外不出が鉄則。それだけでも厳しいのに展示のためによそから借りてくることまで禁じているのだそう。そしてこのルールはこれまで一度も曲げられたことは無いそうです。

でも今回この3部作はお互いの美術館を巡回しています。

ではフリーア美術館はどうしたか?実は1987年に隣接した場所にギャラリーを作っており地下通路でフリーア美術館とつながっています。つまり空気が通っているから持ち出したことにはならないし、よそから借りる分には別ギャラリー扱いという、弁護士さんが多くて困るくらいの国らしいアイデアでうまいことルールを曲げずに新ルールを作っておられます。

なので本物が3部作揃ったのは実質フリーア美術館だけ(展示はそのアーサー・M・サックラーギャラリーにて)。

本当にぎりぎりまで来日が検討されたそうですが、結局答えは”NO”だったそうで、館長の小林さんも「3か月も待って期待していただけに残念でした。」と、そのかわり、その紛れもない本物の「品川の月」をもとに高精細複製画を作ることに協力をしてくれ、本来の掛け軸装として完成させたという経緯もお話しくださいました。

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↑岡田美術館・館長の小林忠さん。お話もユーモアを交えながらとっても面白いんです!

上写真左(喜多川歌麿「吉原の花」江戸時代 寛政3~4年(1791-92)頃 ワズワース・アセーニアム美術館蔵)

上写真右(喜多川歌麿「深川の雪」江戸時代 享和2~文化3年(1802-06)頃 岡田美術館収蔵)

 

栃木市長の鈴木敏美さん。

「栃木県はもともと栃木市から名付けられたんです。今は宇都宮市が県庁所在地なんですが…」と場をあたためつつ、定願寺が栃木市にあることから「深川の雪」の所在を実は探していたというお話も。おちはもちろん「岡田美術館が手に入れられたと聞いて悔しかったです(笑)」とこれまたユーモアでにっこり。栃木市、行ってみたい!と思いました。

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上写真左(喜多川歌麿「吉原の花」江戸時代 寛政3~4年(1791-92)頃 ワズワース・アセーニアム美術館蔵)

上写真右(喜多川歌麿「深川の雪」江戸時代 享和2~文化3年(1802-06)頃 岡田美術館収蔵)

 

 

時代も変われば格付けも変わる 

びっくりするくらい横に長ーい展示ケース。私が印象に残っているのは岡田美術館収蔵、横山大観の「霊峰一文字」(※今展での展示はありません)、約9mの作品なのですがこの作品のために誂えたんではないかというような立派なケースです。

そこに3部作が向かって左から制作想定時期順に「品川の月」「吉原の花」、最晩年に描かれたとされる「深川の雪」と並んでいて、じっくりと鑑賞することができます。

当時の遊郭はハレの場所、女性の最高の位が吉原の花魁、次に深川の芸者、そして品川のいわゆるお食事を運ぶ女性と格付けがはっきりしていたそうです。(小林館長のお話より)

本来一番格付けが高いものが中心に、(中心のものから見て)その左に2番目、3番目が右(③①②)と並べるそうなので、制作想定年順も、格付けの並びにもかなった展示になっています。

「格が違うんだなぁ」と思うと、きものや髪飾りなど細部まで見比べてみたくなりませんか?

 

 

美味しいお土産☆チョコレートの新作発表会も。

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↑今回は新作チョコレートの発表も。試食もしました☆8個セットで税込み4800円です。1つ1つフレーバーが違うんですが、私は紫芋と黒胡麻(折り鶴の柄)が特に好きでした!

 

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↑岡田美術館専属ショコラティエでOkada Museum Chocolateマスターシェフの三浦直樹さん。私は「アマンドショコラ」が好きでよく買って帰ります(^_-)-☆

 

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↑「チョコレートバー」はドラマ「失恋ショコラティエ」で有名になりましたよね。

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若冲の孔雀鳳凰図もチョコレートに!もったいなくて食べられない!って思っちゃいますよね。特別なお土産に。

 

 

グッズも充実

もともと絵はがきやクリアファイル(下・写真右)などはあったんですが、マグネットや液晶レンズクリーナー(下・写真左)、複製画などが新たにラインナップに加わりました。ギフトショップにもぜひ!過去の図録なども販売がありますよ。液晶レンズクリーナーは早速使っています☆

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イベントも

岡田美術館の5階ホールにて、2017年8月26日(土曜)と27日(日曜)にそれぞれ11時からと14時から2回、文化振興プログラム「歌麿と、唄で楽しむ江戸の粋」と題して、柳家小菊さんによる粋曲の特別演奏会もあります。こちらは入館すれば追加料金などは必要なく、先着で見られます。

 

 

時間には余裕をもって

常設の展示も含めると休憩しながら私は4時間程いつも滞在をします。そのくらいゆっくりじっくり向き合いたいたくなりますし、好きだなぁと思った作品は「もう一度見てから出よう!」といった具合に4時間でも足りないなと感じることもあるくらいで、出るころにはフラフラです(笑)。スケジュール次第ですが、近隣にはユネッサンや温泉宿泊施設もたくさんあるので一泊旅行での計画がおすすめです。

アート鑑賞がメインの旅、ちょっと贅沢な気もしますが、特別な休暇になると思いますよ。

 

 

歌麿大作「深川の雪」と「吉原の花」-138年ぶりの夢の再会-
2017年7月28日(金)~10月29日(日)9時~17時(入館は16時30分まで)
会期中休館日なし
主催:岡田美術館
入館料:一般・大学生2800円 小中高生1800円

 

 

※ 展示室内の写真はすべて内覧会時に特別に許可をいただいて撮影したものです。転載や引用、また画像への直リンクやまとめサイトでの使用は一部・全体に関わらずお断りします。

  

DJAIKO62(学芸員DJ)

2016年4月よりαステーションFM京都にて生放送担当中!月&火曜の16時~18時、Kyoto Air Loungeです。radikoプレミアムで全国からお聴きいただけます♪

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